教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.22

2010.04.01 英語文化学科 島村 宣男

ミルトンの影IV

英語に “See Naples and die.” という常套句があります。「ナポリを見て死ね」、
つまり「ナポリを見るまでは死ねない」という意味内容、イタリア半島南部は景勝で
鳴るナポリの美しさを賞讃するものと言ってよいでしょう(日本語にも「日光見ぬうちは
結構と言うな」という類似の表現がありますが、こちらは、〔ニッコウ〕と〔ケッコウ〕
との押韻 (rhyme) がご愛嬌)。現在の港湾都市ナポリ (It. Napoli) は、紀元前
600年頃に古代ギリシア人によって発見され、「ネアポリス」(新都市)がその地名
の語源とされていますが、前4世紀には早くも古代ローマ人によって征服されてい
ます。先の英語表現は、近代に入ってナポリがフランスはブルボン王家の支配下
にあった「黄金期」に由来するもののようです。

 

ナポリからフェリーに乗船して約1時間半、ローマ帝国の皇帝たちがこよなく愛して
別荘まで築いたという麗しい小島があります。これがカプリ島 (It. Capri) です。
モーターボートで30分ほど周回すると、かの「青の洞窟」(It. Grotta Azzurra) が
私たちを迎えてくれます。地元の船頭さんが漕ぐ小舟に乗り換えてもぐるこの洞窟、
私が無事に入れたのは非常に幸運であった、としか言いようがありません。
なにしろ、時間をかけて現場に着いても、入洞の可能性は寄せくる海波のご機嫌待ち、
季節どころか、時間ごとの変化のために入れないことも珍しくなく(二度訪れて、
二度とも入れなかったという人の話を聞いたことがあります)、そのうえ、数日前に
不届き者が異臭を放つ物質を洞内に散布したという事件が発生し、警察当局による
現場検証のために前日まで入洞禁止だったというのです。

 

眩いばかりの外光の屈折作用が洞内の海水に及んで、暗黒の小世界に美しくも
神秘的な光景を生み出しています。ボートに仰向けに横たわり、身を縮めて入洞した
夢時間は僅か数分、瞬時の感動を不安定な体勢のままカメラに収めるのはまさに
至難の業です。このショットも、現像してみるまでは自信がありませんでしたが、
ご覧のような出来映えとなりました。

Grotta Azzurra の神秘(Aug.27, 2009) © Nobuo Shimamura

 

旅程の関係で、古代遺跡で有名なポンペイ (It. Pompei) を訪れることはできません
でしたが、カプリ島からの帰途、穏やかなナポリ湾の彼方に霞むヴェスヴィオ火山
(It. Vesuvio) を望みながら、私は爽やかな潮風に身を委ねたのでした。

 

(英語英米文学科 島村宣男)

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