教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.24

2010.05.06 英語文化学科 島村 宣男

ミルトンの影VI

その妖精のような愛らしさで、世界中の映画ファンを魅了したAudrey Hepburn (1929-93) の主演作の一つに、名作Roman Holiday (1953) があります。このアメリカ映画(監督は名匠 William Wyler)で、イギリスの新進女優 Hepburn はオスカーの主演女優賞を獲得、一躍スターダムにのし上がりました。

 

ところで、英語表現 “Roman holiday” の本来の意味をご存知ですか?客受けを狙った邦題の「ローマの休日」は、誤訳とは言わないまでも、一義的な意味しか伝えてくれません。なにしろ、映画は、ローマ訪問中の某国の王女アンがお忍びで、偶々出合った新聞記者ジョー(私の大好きな俳優 Gregory Peck が演じています)と市内の観光名所をはしゃぎ回るという破天荒な内容だからです(草臥れた老夫婦がローマで閑暇を過ごす、といった悠長な話ではありません)。

 

下の写真を見てください。古代ローマは西暦80年頃、短命ながら善政をしいた皇帝ティトス (L. Titus) の時代に完成した、高さ約50メートル、外周500メートル超の円形競技場、廃墟となって久しいコロッセオ (It. Colosseo) の内部です。その盛時には、貴族や富裕層の市民は、猛獣と剣闘士、またあるときは剣闘士同士の殺し合いに興じて憂さを晴らしました。つまり、この故事が英語の “Roman holiday” という語句の由来で、「他者を犠牲にして得られる愉楽」を意味する俗語表現に他なりません。

 

こうして、映画のタイトルが含意する全体が了解されます。要するに、「やんごとなき王女様のてんやわんやのローマ一日観光」といったところでしょう。

 

映画のタイトル一つにも深い意味が隠されていることが分かります。そして、それが全てを物語るのです。名作に名タイトルあり、と言えましょう。実に、「言葉の力」とはそういうものなのです。

After Roman Holiday © Nobuo Shimamura

 

(英語英米文学科 島村宣男)

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