今年の7月に開幕し、夏のロンドンを盛り上げたオリンピックから既に4ヶ月が過ぎました。街は既にクリスマス・ムード一色で、今度は冬の喧噪に包まれているといったところでしょうか。今回のロンドン五輪は準備に数年を費やし、また開催後の施設利用や都市計画までを緻密に計算した大会としても知られており、現在、その総括も進められつつあります。
ロンドンでのオリンピック開催は既に3回目ということもあり、当初から新たな施設建設やインフラ整備を抑え、既存の設備を利用したコンパクトな大会を目指しました。世界的に有名な地下鉄網や鉄道、幹線道路を持つロンドンは、これ以上オリンピックを利用した基盤整備は必要のない段階にあり、これらは経済的に発達した国に共通する要素でもあります。結果としてイギリスは、低所得層が多く居住し、経済発達から取り残されていたロンドン東部の再開発と失業者対策を中心に計画を進め、ニューアムやハックニー地区などかつては寂れて治安が良くないといわれた地域が、新たに脚光を浴びるようになり
ました。

現在、計画段階から今後の残された施設(オリンピック・レガシー=「遺産」といわれています)の再利用を含めて、ロンドン・オリンピックは国内総生産にある程度の貢献をすると言われています。ただ、先ほどふれたハックニーなど東部の住民からは、「結局、観光客や人の流れは街を素通りするだけで、オリンピックは地域に何も落とさない」という皮肉な実情も伝わってきます。
経済発展のただ中にある右肩上がりの国で催されるオリンピックは、多くの場合、巨額の投資と都市の基盤整備が含まれた大規模な事業になり、その発展の勢いと相まって、地域の人々と開催自治体・国の双方に有形無形の利益をもたらしてきました。しかし、経済が成熟した国家においては、財源の負担や開催のリスク、あるいはオリンピック開催の意義そのものに疑念が突きつけられることすらあります。
ロンドン五輪は、もはや素朴なスポーツの大会ではなく、
国家規模のメガイベントとなったオリンピックを成熟国が開催することに対して一つの方向性を提示すると同時に、その困難をも示した大会といえるかもしれません。現在、日本でも東京が二度目のオリンピック開催を目指して誘致活動を行っていますが、国民からの支持も含めて、果たしてこれらの教訓がどのように活かされることになるでしょうか。

オリンピック・スタジアム現在、周辺施設を含めてクイーン・エリザベス・オリンピック・パークとして再備が進められている。

スタジアム最寄り駅の一つである、東部のストラトフォード。オリンピックに伴う再開発で現代的なショッピングモールに生まれ変わった。