教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.232

2021.05.25 比較文化学科 相原 健志

タクシーのなかの複言語(1)

 まだまだ新型コロナウィルスの感染状況が好転しないなか、研究のために海外渡航をすることも困難となったせいか、大学院生だったとき調査のために何度も訪れたポルトガルのことを思い出す機会が増えました。
 現地で私はフィールドワークをしていて、毎日調査を終えるのは夜10時とか11時くらい。帰宅して就寝するのは日付が変わって深夜2時くらいという生活を続けていました。やがて博士論文のもととなるはずの現地調査ということもあって、毎日、現地調査と文献研究を繰り返し、休む暇もない日々を送っていました。
 ルーティンのように続く毎日、調査地での調査を終えて、帰宅するまでは路線バスに乗り、途中で地下鉄に乗り換えていました。その経路、ポルトガルでは(というかヨーロッパ全体に多いことだと思いますが)ストライキがよく起こっていました。とはいっても、特定の路線が全面的に運休になるといったたぐいのものではなく、一つの路線が間引き運転になったり、行き先が途中までになったり、最終運行時間が早まったりといったかたちでの部分的なものでした。予定されているストライキをまとめた「今日のストライキ」といった名称のウェブサイトもあるくらい、ほとんど毎週のようにどこかでストライキが見られたのですが、私が普段利用している路線では数か月に一回くらいのペースでストライキの順番が回ってきていました。


パス停の近く(筆者撮影、2017年3月22日午後11時ごろ)

 ある日、いつものように調査を終えて夜10時半くらいにバス停に着いてそこで待っていても、バスが来ませんでした。その日うっかりストライキのまとめサイトを見忘れていて、いつもの時間のバスがないことにようやくそのとき気が付いたのです。歩いて20分くらいのところにある別の路線から帰ろうにも、調べると次の運行は1時間半後。どうしたものかと考えていると、とある男性がバス停に近づいてきて、一緒にタクシーに乗らないかと声をかけてきました。ポルトガルはあまり犯罪も多くなく、とある統計では日本より治安が良いくらいともされるので、二つ返事で首を縦に振り、バス停を離れて二人でタクシーを探し始めました。それでもなおなかなか見つからず、結局もとのバス停の近くまで戻ってくると、バス停で困った表情をしている二人組の女性をみかけました。おそらく先ほどの私のように、ストがあることを知らないのだろうと思い、彼女らにタクシーに同乗しないかと声をかけました(割り勘すれば安くなるし!)。結局4人でタクシーを拾い、街の中心部の地下鉄の駅まで向かうことになりました。(続く)


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