2013.01.25.
英語文化学科大橋 一人

教え合い,学び合い

私のゼミナールで昨年の秋にアメリカからの留学生との交流会を行いました。留学生は日本語を学びに来ているため「日本語の疑問」を,ゼミの学生は英語を学んでいるため「英語の疑問」を互いに投げかけます。日本語の疑問の時はお互いに日本語で,英語の疑問の時にはお互いに英語で議論するというのが原則です。留学生とゼミ生とが入り混じった3つのグループに分かれ,互いに持ち寄った疑問をテーマにしてしばらく議論し,結論は全体会で発表します。もちろん,発表も留学生は日本語で,ゼミ生は英語で行います。

留学生からの疑問をいくつかご紹介しましょう。
1. 日本語の「わかる」と「知る」はどう違うの?
2. 「お疲れ様」には「こんにちは」と「さようなら」の両方の意味があるの?
3. どうして日本では男女が友達として二人で遊びに行くことが珍しいことなの?
さて,いくつ自信をもって答えることができるでしょうか。

2番の議論だけ少し紹介します。留学生には,日本人の学生たちが出会った時に「お疲れ様」と言っているのが不思議だったようです。きっと,日本語を学ぶ授業では出会った時には「こんにちは」,別れるときには「さようなら」と言うのだと教えられているはずです。でも,実際に日本人の学生たちはそうは言っていない。一見答えは簡単そうです。実際,この問題を議論したグループでは「お疲れ様」は「こんにちは」の意味でも「さようなら」の意味でも使うという結論になりました。ところが全体発表の時に,とても物静かなブライアン君が一言。

「お疲れ様を使うのは授業の後に部活で会った時で,・・・朝,はじめて会った時は使わない・・・」

確かに一理あります。おそらく交代制のアルバイトなどで仕事を交替する時によく使うのでしょう。たとえその日初めて会う人でも,仕事に入る人が仕事を終えた人に対して「お疲れ様」と言うのは特別なことではありません。ブライアン君の日本語の感覚も,何か一仕事(学生にとっては授業ですが)終えた人との出会いのあいさつとして使うのではないかというものだったのかもしれません。
留学生たちのほとんどは大学3年生から日本語を学び始めたとのことです。ほんのわずかな期間で,日本語で議論するまでになっていることにゼミ生たちも驚かされました。もちろん,ゼミの学生も一見簡単そうで,実は難しい英語の疑問を投げかけて留学生の頭を悩ませました。いつもの授業とは違い,学生同士で互いに教え合い,学び合う交流会となりました。