大学教員には、研究に専念するため一定期間大学を離れる「研究期間(サバティカル)」が認められています。下記の画像は、その研究期間中に所属することになった、あるイギリスの大学へ提出した履歴書の一部です。

海外履歴書02(400)

ひと目でわかる日本の履歴書との違いは、まず「顔写真がない」ことでしょうか。そして性別も年齢欄もありません。日本の感覚からすると違和感があるかもしれませんが、英米では普通のことです。実際のところ、私は女性だと思われていたらしく(先方の大学とのやり取りで「she」や「her」が使われていました)。現地で受け入れ教員と挨拶した際に、相手ははじめて私の顔や性別、年格好を知ることになったわけです。

でも、これで何か不都合があるかといえば……考えてみると何もありませんよね?仕事や研究で問われる履歴とは、本来、仕事のキャリアや業績であるはずで、顔や性別(ましてや人種)ではありませんから。

一方、日本の履歴書に顔や性別、年齢が必須なことは、当然ながらこれらの要素が就職や選考に用いられているということでもあります。建前上、「ルックス(顔)が選考に影響するなどとんでもない!」という人は多いでしょうが、少なくとも、年齢や性別が選考上重要なことは、日本の就職慣習上否定できない事実でしょう。

こうした履歴書や選考をめぐる違いは、その背景にある文化差を反映しています。イギリスのような履歴書であれば、当然ながら、比較的年齢やキャリアの高い人物の方が業績や能力で上回りやすく、新卒の若者は苦戦することになるでしょう。反対に、日本の履歴書では、新卒一斉採用という独自の文化を背景に、あまり(というか何も)業績のないまっさらな新卒の若者に大きなチャンスが割り当てられます。

これらのどちらが好ましいか、簡単に決めることはできません。しかしながら、日本の就職や労働環境は、徐々に英米のそれに近づきつつあります。イギリスの履歴書は、今後、日本で求められていくことになる個人識別や人物選考の一つの基準を示しているといえるかも知れません。