教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.156

2016.05.20 比較文化学科 大越 公平

毎週、新書を<運ぶヒト>

大越 公平図1(小)
 
 春学期、ゼミナールⅠで読み始めた新書がある。『<運ぶヒト>の人類学』(川田順造 岩波書店2014)である。文化人類学的研究の一つのモデルとして、この本を音読している。私もメンバーも、毎週、この本をゼミナール室に「運んでいく」ことになった。<運ぶヒト>を実践している。
 
写真1(400)
 
 2014年9月に出版された新書で、「人間とは何か」という基本的なテーマを考えるうえでの文化人類学的な視点を分かりやすく示している一冊である。人間の特徴の一つである<運ぶ>という行動に注目している。
 人間の特徴を示すキーワードで最もよく知られているのは、「ホモ・サピエンス(知恵のあるヒト)」であろう。川田はこの他に、ヨハン・ホイジンガの名付けた「ホモ・ルーデンス(遊ぶヒト)」、ルイ・デュモンの「ホモ・ヒエラルキクス(階層化好きのヒト)」を取り上げ、こうした先人にならい、ヒトの特徴を示すキーワードを「ホモ・ポルターンス(運ぶヒト)」としたいという(7頁)。本書には、人類の遥か昔にタイムスリップし、人類がアフリカから移動する様子をイメージした次のような説明がある。
 
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 私たちヒトの先祖が小さな群れになって、アフリカ大陸から出て行ったとき、生活必需品をどうやって運んだのかという問いに対する答えは、仮説として本書の冒頭に述べた。
 この本で、モノの運び方について、さまざまな側面から検討してきた結果を踏まえて、改めてもう一度推測すれば、女性は半球形大型ヒョウタン二つ割りの器か、太い植物の蔓で編んだ大型の籠に、生活必需品を入れて頭上にのせ、赤子をくるんだ毛皮か植物の蔓を編んだものを、胸の前で縛って背負い、幼児の手を引いて歩いた。
 成人男性や少年は、石器で端を尖らせた木の棒を、獲物を捕る、あるいは猛獣など外敵と戦う道具として手にもち、革袋に仕止めた獲物なども入れ、首の前で袋の端を結んで背負うか、肩や腰にくくりつけて、歩いていったのではなかったろうか。(川田 2014 140頁)
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 当時のヒトが移動する様子を推察している。おそらく、そうだったのかもしれない。でも、実際には? 運びながら考えよう。
 さまざまな運び方があるが、その一つ、頭の上に載せて物を運ぶ、いわゆる「頭上運搬」を、フィールドワークでも見かけることがある。人類がアフリカから移動したころから伝承されている一つの行動であろうか。
 
写真2(400)
 
 画像は、2014年3月27日、インドネシアのバリ島にあるブサキ寺院でみた頭上運搬である。茹でたトウモロコシ、バナナを入れた器を頭の上に載せて、売り上げのお金(硬貨)をカバンに納めている。バランスのとり方は見事である。もう一枚の画像の女性は、バランスがとりにくいのか、荷物を頭に載せ、手を添えたまま移動していた。両手で抱える人もいた。
 
写真3(400)
 
 学生時代、京都府の丹後半島を仲間と旅した。民俗学を講義されていた先生にその様子を報告し、「あの地域には、頭上運搬が見られたでしょう」というコメントをもらったことがある。当時、その特徴の解説を受けたが、どのように私の調査に取り入れ、研究を進めていくべきか、見当がつかなかった。本書、それに学生時代に履修した川田先生の講義を参考にして、これからの調査で一歩踏み込んだ聞書きを試みたい。
 
図2身近な文化事象に研究のヒントを探しましょう。ゼミナールでのメンバーのプレゼンテーションを楽しみにしています。春学期後半も頑張りましょう。
 
 
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