三年ほど前に、日本フランス語フランス文学会、日本フランス語教育学会、在日フランス大使館の三団体が主催する、フランス語教育の教員研修(フランス語で「スタージュ」といいます)に参加しました。これは、日本でフランス語教育に携わる教員(高校や大学、語学学校の先生など)を集めて、フランス語の教育法について学んでもらうというイベントで、毎年三月に、飯田橋にあるアンスティチュ・フランセ東京で行われます。例年二十名ほどが参加し、四日間かけて、朝から晩までさまざまなフランス語の教育法をたたきこまれ、最終日にはグループで模擬授業も行います。教育法について学べることはもちろんなのですが、濃密な四日間をともに過ごした参加者たちと強いきずなができることも大きく、いっしょに参加した仲間たちとは、いまでも学会などで再会するたびに思い出を語り合います(「スタージュ同窓会」のようなものもやっていました)。
このスタージュに、今年は裏方として参加しました。文学会から選出されるスタージュ運営委員会の副委員長になったためなのですが、三月の開催に向けて、前年の七月から二か月に一度のペースで委員会を開き、ほかの委員の方々とさまざまな準備を重ねてきました。自分が参加者だったときは気づかなかったのですが、参加者や講師の先生方が気持ちよく過ごせるよう、じつにたくさんの細やかな配慮がなされており、運営する側になってはじめて知って感心することも多かったです。
三月二十二日から二十五日まで開催された今年のスタージュは、いくつか小さなトラブルはあったものの無事に終了しました。ふだんは教壇に立って学生を相手に教えている先生方が、反対に学ぶ側として、「フランス語をどうやって教えればよいか」を(やや緊張気味に)教わっている様子や、休憩時間に学んだばかりの教育法についてあれこれ議論している光景は、(自分もそう見えていたのでしょうが)とても新鮮でした。
学ぶ側から教える側になってしばらく経ちますが、学ぶ側がどう思うか、あるいは自分が学ぶ側だったときにどう思っていたかは、つねに忘れないように心がけています。それでも、今回のスタージュに裏方として参加してみて、やはり忘れてしまっていたこと、あるいはこれまで気づかなかったことがたくさんありました。フランス語に限らず、自分の授業が学生にどう思われているか、学生が自分をどう見ているかには、できるだけ敏感でありたい、あらためてそう思わされた四日間でした。