2022.06.24.
英語文化学科吉田 広毅

空の色:図書館企画展示への誘い

 「青と黄色」:ウクライナの国旗の色は、「ウクライナ憲法」第20条に“синього і жовтого”と定められています。Синійは、英語でいう“blue”にあたる色ですが、実はウクライナ語には“blue”を表す言葉がсинійに加え、блакитний、голубийと3つもあります。しかも、いずれの色も空を表現するのに使われます。それでは、синійはどのような空の色を表しているのでしょうか。コロケーション(言葉の結びつき)の研究によれば、синійは、大地との境目がない、太陽が燦燦と輝く夏の空を表す色として使われることが多いそうです。そう考えますと、ウクライナの国旗が、広く澄み渡った空のもと、穂を実らせて黄金色に染まる小麦畑を象徴しているという説もうなずけます。
さて、私たちは、ウクライナについて、「知らないようで、知っている」ことが少なくありません。例えば、世界三大スープ(トムヤムクン、フカヒレ、ブイヤベースとあわせると四大?)のひとつとして知られるボルシチは、実はウクライナが発祥です。色とりどりの衣装をまとって踊るコサックダンスは、ウクライナの伝統舞踊です(ウクライナ国歌に「我らコサック民族」という歌詞があるくらいです)。リムスキー=コルサコフやラヴェルなどのクラシック音楽の作曲家のみならず、イギリスのロックバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマーによっても編曲されたムソルグスキーの『展覧会の絵』は、壮大なスケールの「キエフの大門」で締めくくられます。
多くの人が子どもの頃に読んだであろう絵本『てぶくろ』も、ウクライナに伝わる民話がもとになっています(この『てぶくろ』、巨匠ガタロー☆マンにより、笑本『てぶ~くろ』としてリメイクされ、本年2月に出版されました)。今回、こうした豊かな歴史、文化、思想に彩られたウクライナを身近に感じて欲しいと願い、図書館展示を企画しました。皆さん、美しく肥沃な大地で育まれたウクライナの文化を絵本でたどってみませんか。