ロンドン・オリンピックまであと2ヶ月あまりとなったイギリスでは、来月初旬に、世界が注目するもう一つのビッグ・イベント、「女王即位60周年祝賀式典」が開催されます。エリザベス女王は、今年の2月6日に既に即位60周年を迎えられましたが、史上2度目の慶事を祝うために、イギリスでは6月2日から5日までの4日間に様々なイベントが計画されています。コラム〈前編〉では、祝祭ムードが頂点に達する「セントラル・ウィーク・エンド」と呼ばれる4日間のイベントについて、少しご紹介したいと思います。
〈左は2012年2月21日に公表された「ダイヤモンド・ジュビリー・オフィシャル・エンブレム」。35,000もの公募作品からチェスター在住の10歳の少女、キャサリン・デュワーさんのデザインが選ばれました。ジュビリーに関係することになら、誰でも無料で使用でき、英語版のほかにウェールズ語版もあります。〉

http://www.thediamondjubilee.org/download-jubilee-emblem

初日は、エリザベス女王の「エプソム・ダービー」観戦。日本では単に「イギリスのダービー」と呼ばれるこの競馬レースは、ロンドン近郊のサリー州で1780年から続く伝統行事の一つです。イギリスでは、競馬は昔から王侯貴族のためのスポーツであり、現在でも華やかに着飾った人々が集う社交の場。日本の競馬とは随分と雰囲気が異なります。
  二日目の6月3日の午後は、「テムズ・ダイヤモンド・ジュビリー・ペイジェント」。女王の乗る王室船 ‘Spirit of Chartwell’ 号を始め、約1,000艘もの大小様々な船やボートが、「バターシー・ブリッジ」から「タワー・ブリッジ」まで、7マイルほど(約11km)テムズ河を下る、かつて類を見ない規模の水上パレードです。

http://www.thamesdiamondjubileepageant.org/

また、この日のお昼は「ビッグ・ジュビリー・ランチ」と命名され、英国民は、隣人や友人と共に、昼食を楽しむように呼びかけられています。

〈ホイッスラーの「青と金のノクターン―オールド・バターシー・ブリッジ」、テート・ギャラリー所蔵、橋を下から見上げるこの絵の構図には、浮世絵の影響が見られると言われています。〉

三日目の6月4日は、BBC主催による、バッキンガム宮殿でのライブ・コンサート。エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー、クリフ・リチャード、アニー・レノックス、etc. など錚々たる顔ぶれのミュージシャンたちが集います。このコンサートには、抽選に当たった一万人が無料で招待されます。夜には、イギリスの祝祭には欠かせない巨大な「かがり火」(beacon) が、イギリス国内だけでなく、英連邦諸国、王室属領のチャンネル諸島やマン島など、2,012箇所で4,000以上焚かれます。
そして最終日の6月5日は、セントポール大聖堂での礼拝とウェストミンスター・ホールからバッキンガム宮殿への馬車によるパレードです。国を挙げてこの祝祭を祝うために、イギリス政府は今年に限り、この四日間を連休にします。街中にはためくユニオンジャック、教会から鳴り響く鐘の音、人々の歓声やお祝いの音楽で、初夏のロンドンは、さぞや賑やかに華やぐことでしょう。
イギリス史上初のダイヤモンド・ジュビリーに因んだ「115歳のちりめん紙」については、〈後半〉で。