みなさんは、「魔法使いの弟子」という話を知っていますか。師の魔法使いが箒やらバケツやらを魔法で呼び出して掃除させるのを見ていた弟子たちが、師の留守中に見真似でやってみるのですが、止めさせる呪文を覚えていなかったものだから、便利な道具も暴走して、事態を収拾できなくなるという話です。便利を「呼び出す」知識は、それを「制御する」知恵と一体になっていなければなりません。今、私たちがこの話に身をつまされるのは、一昨年来、この「制御する」知恵を実践することがいかに難しいかを痛感しているからではないでしょうか。17世紀以来、私たちは科学的思考を身に着け、それまで脅威の対象でしかなかった自然からさまざまな恩恵を引き出して、生活の利便を図ってきました。しかし、当面の利益や便利さにかまけて、その裏面を認識し、方策を講じることは後回しにしてきた嫌いがあります。そのつけが現実になった今こそ、この「知恵」を駆使することが急務になっています。
比較文化学科は、物を生産するという第一義的な技術を習得するのではなく、それと表裏一体であるべき「制御する」思考を鍛えるところです。みなさんも比較文化学科でともに学んでこの思考を鍛え、「反省的な知」を駆使できる人間のひとりとして、これからの社会に本当に必要な人材に成長していきませんか。
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教員コラム