今年(2018年)の9月、学生とともに中国陝西(せんせい)省西安市にある陝西師範大学を訪れました。陝西師範大学は中国教育部直轄の重点大学であり、師範教育も含めた総合大学です。今回の来訪の目的は、こちらの日本語学科の学生と関東学院大学の学生との間で交流会を行うためでした。でも、ここでは大学敷地内のある遺跡について書きたいと思います。
陝西師範大学は西安市の南隅にあり、地下鉄の通った今となっては都会の大学といった印象です。しかし、以前は市の中心部から離れた鄙びた雰囲気の大学でした(個人的な見解です)。この大学の位置を唐代の長安城の場所に当てはめるならば、南端に相当します。巨大な長安城の南端ですから、中心地からかなりの距離になります。
大学のキャンパス南隅には、唐代の円丘遺跡があり、円形の基壇を重ねた円丘の形を今もなお留めています。最近漸く周辺が整備され、遺跡公園として公開されました。
この円丘は唐代の皇帝が冬至に天を祀る儀式を行った基壇です。天は円く地は四角いという思想の下、皇帝は円い基壇が重なった、更に中央の小さな円形の壇の上に立ち、天を祀りました。この儀式は、皇帝が天子であり、天下を統治する正当性を示すための重要な儀式でした。
この円丘は、実は他にも中国に存在しています。それは北京の天壇です。今は基壇の周囲も含めて天壇公園となっています。数年前に訪れた際は、基壇中央の丸い石の上に立とうと、大勢の参観者が行列を成していました。この場所は、かつては皇帝のみが立つことを許された場所です。それを知ってか知らずか、チベット族のお婆さんが人一倍念入りに拝んでいて、まるで儀式のようでした。
長安(今の西安)から北京へ都が変わっても、この円丘が造られたことで、そこは天子が天と繋がる場所になり、その都市に天下の中心としての説得性を持たせたのです。