2011.12.23.
英語文化学科本村 浩二

“Guy Fawkes Night”に参加して

私がオックスフォード滞在中に得た興味深い経験をひとつご紹介します。
イギリスでは毎年11月5日の夜に、各地で、ガイ・フォークスの人形を焼き、花火を打ち上げる大規模なフェスティバルが開かれます。このガイ・フォークスというのは、1605年に国会議事堂を爆破しようとした実行犯(13人の若者)の1人で、イギリス史上もっとも有名な反逆者であるとされています(ちなみに、彼がこのようなテロ行為に及んだのは、彼がローマ・カトリック教徒で、当時の国王ジェームズ1世のプロテスタント政策に不満があったからである、と言われています)。

South Park in Oxford, 2010/11/06

要するに、「ガイ・フォークス・ナイト」というのは、彼の爆破計画が未然に防がれたことをお祝いする日であるのです。さて、そう言うと聞こえはいいのですが、私には実際のところそれが「見せしめ火刑」のように思えて仕方がありませんでした。「悪いことをするとこうなるよ!」といったひそかなメッセージを含蓄した儀式、とでも言ったら言い過ぎでしょうか。ガイ・フォークスの儀式からこのようなメッセージを読み取る者は、今後自身の内部に宿る邪悪な要素を焼失し、まっとうな国民になろうとするのでしょう。
もちろん、悪事を行えば処罰されるのは当然です。国家の安全・平穏の維持のために、悪事はできるかぎり抑制されなくてはなりません。とはいえ、人間の処刑の場面というのは(たとえそれが人形を使った仮想現実であるとはいえ)、さほど気持ちの良いものではありません。
暗闇のなか、火に包まれて崩れ落ちる、ガイ・フォークスの巨大な人形(=邪悪の象徴?)。それを見て驚愕し、おののいたのは、私が己に内在する邪悪なものを垣間見てしまったからでしょうか。