「金色」の世界をどのように表現しましょうか。「こんじき」、「きんいろ」あるいは「こがねいろ」等々の言葉からそれぞれ違った世界が広がるように思えます。ミャンマーの旅では、金色の世界に出合い、その素晴らしさに息をのむ一瞬がありました。紺碧の空と金色の組み合わせには、独特な世界が存在するようです。

来世の幸福、来年の幸福    シュエダゴォン・パヤー

昨年の大晦日は、ミャンマーのヤンゴンにある荘厳な仏塔と仏教寺院をゆっくりと時間をかけて巡りました。来世の幸福を願って寄進されたといわれる金色の建物の周囲には、身近な来年の幸福をも願う熱心な人びとが集まっていました。私も思わず来年の幸いを願わずにはいられませんでした。願いが通じるとよいのですが。
例年、冬休みには東南アジアを旅行し、翌年のカレンダーを買い求めます。ヤンゴンでは、ボーヂョーアウンサン通りの露店で販売されているのを目にしました。目抜き通りで販売されているのは、少し意外でした。バガンやマンダレー等の他の都市では見つけられず、ヤンゴンにもどったところ、すぐに見つけることができたのです。ふだんは文房具や食料品を売っているとか。カレンダーは会社等々からの贈り物という考えがミャンマーでも強いそうですが、私が店に立ち寄ったわずかな時間でも買い求めている人がいましたので、一時的に仮の店を開くだけの需要はあるようです。店に並ぶカレンダーはインドネシア、タイ、ベトナム等の東南アジア諸国で見かけるカレンダーとほぼ同様な形式のものが多く、色彩豊かなポスターカレンダーです。寺院、仏塔、婚礼衣装姿のモデル、動物、観光スポット等をテーマにした華やかなポスターカレンダーが多く、アウンサンスーチーさんをモデルにしたカレンダーも数多くありました。他に占いのカレンダーも。

ボーヂョーアウンサン通りの露店に並ぶカレンダー

少し変わったものは、コンパクトな冊子形式の「1900年−2013年」カレンダー(暦)、いわゆる「百年カレンダー」で、現在、生活している人びとのすべての誕生日が何曜日であるかを知るためには便利です。「生誕曜日」すなわち「八曜日」(水曜日だけ午前と午後に分かれます)には、方角、星、動物がイメージされていて、これにより人の性格、人生、他人との相性が決まるそうです。これを多くの人びとが信じています。私が買い求めたものは太陽暦が中心のカレンダーであり、これにビルマ暦が添えられています。これをもとに判断し、仏塔の周囲に置かれた「八曜日」用の祭壇で拝むそうです。外国人が拝む場合は太陽暦の「生誕曜日」のまま祭壇で拝んでよいとガイドさんはアドバイスしています。古くからこのように拝んでいたのでしょうか。これから何度かミャンマーを訪問し、ビルマ暦を学びながら、改めて考えてみる必要がありそうです。
カレンダーや暦は、実際に利用する人のその使い方も含めて、当該文化を知るための貴重な資料の一つです。あらためて自分が使っているカレンダーの特徴についても調べてみませんか。
今年の関東学院大学のカレンダーは、横浜の風景、町並み、行事等をテーマにしたポスターカレンダーです。学院が建つ「地域の文化(横浜の文化、さらに神奈川の文化)」にも関心をもちながら一人ひとり、独自の研究を進めていきましょう。
*本コラムは、ゼミナールのメンバーに送信した「研究室歳時記」(1月1日、1月19日)をもとにしています。折りに触れ、関心をもった文化事象についての考察やゼミナールメンバーの研究テーマに関連する文化事象についての考察を簡単にまとめています。身近な文化事象に研究のヒントを探しましょう。