2011.07.08.
英語文化学科島村 宣男

ミルトンの影(補遺1)

イギリス17世紀の詩人思想家ミルトン (John Milton, 1608-1674) の影を追う、私の「グランド・ツアー」ならぬ
イタリア旅行の駄文に付した写真は各方面からお褒めの言葉を頂戴しました。
この場を再び拝借、「補遺」とは題するものの、その実は「フォト・ギャラリー」、まずは「ヴェネツイア編」――「アドリア海の真珠」とも称される美しい港湾都市から。


サン・マルコ寺院 (Basilica di San Marco) から見る
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会 (Chiesa di san Giorgio Maggiore) の絶景
(Aug.2009)©Nobuo Shimamura

  ご覧のように、ヴェネツィア(It. Venezia, E. Venice) は
「水の都」、美しい運河が大きなサン・マルコ広場 (Piazza
San Marco) を中心にして縦横に張りめぐらされています。
さて、満29歳のミルトンのイタリアへの旅ですが、その全
旅程はおおよそ以下のとおりです。

ジェノヴァ (It. Genova, E. Genoa) →
フィレンツェ (It. Firenze, E. Florence) →
シエナ (Siena) → ローマ (It. Roma, E. Rome) →
ナポリ (It. Napoli, E. Naples) → ローマ(再訪)→
フィレンツェ(再訪)→ ヴェネツィア

ご覧のように、ヴェネツィア訪問は最後の最後になってい
ます。ボローニャ (Bologna) からフェッラーラ (Ferrara)
を経由して入った当時のヴェネツィアは、「かなりの統治
能力を有する自立した海洋都市国家」であり、「後年のミル
トンの共和国思想 (republicanism) への深い関与が、
一ヶ月に及ぶこのヴェネツィアの実見に基づいていた」とは、
最新の「ミルトン伝」(Campbell & Corn, John Milton: Life,
Work, and Thought, Oxford U. P. 2008) が指摘する
ところです。「見ること」が、それも「自分の眼で見ること」が、
いかに大切であるかを教えてくれる歴史の一瞬であったと
言えましょう。
ゴンドラ旅情
(Aug.2009)©Nobuo Shimamura