最近の研究は、もっぱら日本の現代詩の翻訳出版に意識を集中してきた。数年前に出来上がった、辻征夫 (1939−2000)の全詩集から選んだ50編を翻訳して、日本の詩の大手の出版社に当たってみたものの、良い返事が得られなかった。しかし、辻征夫の詩が好きなことと、彼の詩が翻訳 しても充分に英語圏のひとに理解してもらえるという希望的観測で根気よくやるしかない、と半ばあきらめていた。ところが、アメリカの小さな出版社が、eBook(電子ブック)なら出しましょうと引き受けてくれた。アメリカの詩の世界の最前線では、紙媒体の詩集は売れないので、その代わりにeBook(電子ブックのことを「イーブック」と呼ぶらしい)でまず出してみて、売れ行きがいいようだったら、それから通常の印刷された紙の詩集がでるというのが、いまどきの詩集の現状のようである。ともかく、初めての試みで、わからないことばかりの不思議な経験だが、今年中に出てくれることを期待している。今年が、辻征夫さんが亡くなって13回忌にあたる節目の年でもあるからだ。おそらくeBookのカバーになるはずの戸次祥子さんのカバー・デザインがすばらしい。
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教員コラム