2013.10.25.
比較文化学科君塚 直隆

わたしの作業場②王室文書館

前回の教員コラム(vol.136 : 2013年1月18日掲載)に引き続き、近現代イギリス史を専攻している私が一次史料(研究対象者が実際に残した日記・日誌・書簡類)を調査している文書館の紹介をいたしましょう。
今回ご紹介するのは、ロンドンから西へ42キロほど離れたウィンザー城内にある王室文書館(The Royal Archives)です。ウィンザー城は、エリザベス女王がロンドンに滞在しておられる間は、週末を過ごす居城として有名ですね。その城内で最も背の高いラウンドタワーという塔の上に文書館はあります。

この最上階にある文書館に行くまでには、100段以上もある石段を登らなければなりません。

文書館は完全予約制で、閲覧室も最大で三組ぐらいしか対応できない大きさです。この部屋からの眺めは素晴らしいもので、眼下にはイギリスでも屈指のパブリック・スクールのひとつイートン校が拡がっています。

しかし、いつまでも景色ばかり眺めているわけにはいきません。壁に掛けられたヴィクトリア女王(在位1837〜1901年)の肖像画が私をにらみつけて「早く私の日誌をお調べなさい!」と怒ってきます。

こうして全111巻からなる女王の日誌や手紙などをもとに書き上げたのが、『ヴィクトリア女王』(中公新書、2007年)です。彼女の息子のエドワード七世やその息子ジョージ五世の書簡や日記などもここで調べました。
文書館の人たちはみな親切に助けてくれます。お昼ご飯を抜いて調べますので、午後5時に調査を終えて城を後にする頃にはクタクタになりますが、また来年にでも新たな調査のために訪れるつもりです。