2014.02.25.
比較文化学科岡田 桂

子どものスポーツにも経済格差が?

2012年のロンドンオリンピック後、イギリスの新聞『ガーディアン』紙に「オリンピックメダリストの3分の1が私立学校出身」という記事が載りました。イギリスでは、学費の高い私立学校は全体の7%に過ぎません。それが、オリンピックでメダルを獲得するような高いレベルで活躍する選手全体の3分の1を占めるというのですから、いかに偏りがあるかがわかります。
http://www.theguardian.com/education/2012/aug/13/olympics-2012-gb-medallists-private-schooling
この記事では、資金の豊富な私立学校が、充実した設備や優秀なコーチを有して生徒に優れたスポーツ環境を提供している一方で、厳しい財政状態にある公立学校はグラウンドを売却させられるなど、スポーツの機会自体が満足に確保されていないという点が指摘されています。要するに、豊かな家庭の子どもは恵まれた私立学校の教育を通じて、スポーツにも秀でやすいということでしょう。

実は、日本でも似たような状況が生まれつつあります。教育産業であるベネッセが行った調査によれば、成績の良い子どもほど運動能力が高い可能性があることが示唆されています。 http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/kyoikuhi/webreport/report01_01.html
学力と親の収入や学歴に相関関係があることは既に指摘されていますので、スポーツや運動能力も、おそらくこうした出身家庭の環境に左右されるということでしょう。事実、東京都の行った調査2013年度『東京都児童・生徒体力・運動能力,生活・運動習慣等調査』によれば、こどもの体力が高い区と、住民の所得が高い区は、かなりの部分が重なります。

かつては「勉強か、スポーツか」といったように、知的能力と身体的能力を別のものとしてとらえてきましたが、現代の社会で「勉強もスポーツも」出身家庭の環境に左右されてしまうとすれば、それは不平等だと言わざるを得ません。公教育における体育やスポーツのあり方を考え直す必要性が高まっています。

(公園でスポーツする子どもたち(ロンドン))