2015.05.22.
比較文化学科安井聖

星野富弘さんの詩の世界

2014年11月4日(火)に関東学院大学金沢文庫キャンパスで、『星野富広 人と詩の世界――でも その傷のところから』と題してキリスト教講演会(大学宗教教育センター主催)が行なわれました。体育教師であった星野富弘さんは、クラブ活動の指導中に頚髄を損傷し、手足の自由を失ってしまわれました。しかしその後血のにじむような努力を重ね、口に筆をくわえて絵と詩を書くようになられました。そしてこれまでに人々の心を打つ作品を、数多く発表してこられました。そんな星野さんの人と詩の世界に、学生たちをはじめ多くの方々に触れていただきたいと考え、この講演会は企画されました。

プログラムは、前半に二人の朗読者による星野さんの25編の詩の朗読、後半に講演という内容でした。なぜ朗読者が二人立てられたかというと、日本語原文の朗読と、その英訳詩の朗読が交互になされたからです。しかも得がたい朗読者が与えられました。日本語の朗読は、関東学院女子短期大学の卒業生でdocomo留守番電話サービスの声でおなじみのナレーター、中村啓子さんがしてくださいました。また英語の朗読は、関東学院職員で劇団YSG(The Yokohama Shakespeare Group)座長の瀬沼達也さんがしてくださいました。心に響く詩の言葉が優れた朗読によって会場全体に響き渡り、出席者は貴重な経験をさせていただきました。

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続いて北海道の北広島福音キリスト教会牧師の米谷信雄さんが「友人・星野富弘」という題で講演をしてくださいました。学生時代から星野さんの友人であった米谷さんは、突然の出来事を前に絶望する友に聖書をプレゼントされました。そして聖書の言葉と出会った星野さんが苦悶の中から立ち上がっていかれる姿を、その傍らで見ておられました。そんな米谷さんからお話を聴かせていただけたこともまた貴重な経験でした。

学生たちの感想(抜粋)
・瀬沼さんの朗読はとても迫力があり、英語英米文学科の私にとってはとても勉強になるものでした。いつか私も瀬沼さんのような発音を身につけたいと思います。また中村さんのお母さんのような優しい朗読に少し涙ぐんでしまいました。牧師の米谷さんは優しい老紳士といった感じの方で、米谷さんの話には星野さんを思う優しい気持ちがあふれていました。星野さんが思うように動けなくなったときに聖書を届けてあげた米谷牧師の神への信仰は、とても素晴らしいものだと思いました。星野さんには会ったことはないけど、すごく素直な方だという印象を受けました。

・自分が自分ではなくなる「絶望」は、はかりしれないものだと思います。しかし星野さんはそれに負けず、必死に生き続けている姿に感動しました。言葉は人を傷つけることもあります。しかし星野さんの言葉のように「希望」になることもあり、言葉というものの意味深さを知りました。星野さんの言葉一つ一つが心に響いてきて、背中を押されたような気がします。

・「はなしょうぶ」という詩の中の「私は/大ぜいの人の/愛の中にいて/なぜ/みにくいことばかり/考えるのだろう」という言葉は、ほとんどの人に当てはまると思いました。そしてなぜ人は人を愛するより、憎むことの方が多いのだろうと深く考えさせられました。

・私の悩みは無事に大学を卒業して就職先を見つけることですが、その悩みは人生でずっと続くわけではありません。しかし星野さんは生涯に渡ってからだの不自由さと戦うことになったと伺いました。その苦しみは私には想像がつかない程のものだと思います。そのような大きな壁に立ち向かう星野さんの勇気に、私自身が勇気付けられました。

出典
『JOURNEY of THE WIND』
TOMIHIRO HOSHINO/著  KYOKO&GAVIN BANTOK/訳
1988年 立風書房