比較文化学科に新任教員として着任してから三か月が経ち、授業や会議をふくめ、ようやく色々なことに慣れてきました。先日は、ゼミ生の教育実習の見学にいく機会もあり、自分の学生が高校生を前に授業をする姿をみて刺激をうけたり、高校の先生と教育の意義について議論したりと、とても有意義な時間を過ごすことができました。教員になってよかったと思うことが多いです。
ところで、私は比較文化学科ではフランス語とフランス文化について教えているのですが、この二科目はこれまでも教育の経験があったので、とくに問題はありませんでした。ですがひとつだけ、今までうけもったことのない「ゼミ」を担当することに、はじめは少し不安を感じていました。
比較文化学科では、二年生から各教員のゼミにはいり、さらに一年生のうちにも、基礎ゼミや合同ゼミという形で、学生の議論を主体とする少人数の演習をおこなっています。これは、学生に早い段階で大学における(自主的な)勉強のやり方を身に着けさせるためのもので、他学科にはない比較文化学科だけの特徴です。
私は、今年は基礎ゼミの他に三年生と四年生のゼミをもっており、四年生は前任の先生から引き継いだ学生なので、みなやることは決まっていて、それを導くだけでよかったのですが、三年生については、ゼミで何をどう学んでいくかまだ定まっておらず、こちらのやり方を迷っていたのです。
最初は、フランスの文化や社会にかんする入門的な本をみんなで読んでいたのですが、それだとやはり飽きてしまい、なかなか自分なりの問題を見つけていくことができません。そこでやり方を変え、フランスにかんするニュースや本の抜粋を人数分だけ用意して、それぞれが別の文章を読み、最後に、自分が読んだものを他の学生に紹介する、という形式にしました。これが功を奏して、これまでよりもずっと真剣に取り組んでくれるようになりました。
もう少し具体的にいうと、学生はまず、私が用意した本の抜粋やニュース(テーマはスポーツから政治まで様々です)から、じゃんけんで順番を決めて自分が読むものを選びます(ただし伏せてあるので内容はとってみないとわかりません)。じゃんけんでは同時に司会も決め、その後の進行は司会役の学生がすべておこないます。司会にしたがって十五分程度であたえられた資料を初見で読み、そのあと、前に出て自分が読んだものを他の学生にわかりやすく紹介し、もしあれば自分の意見を述べます。聞いている学生は、説明がわかりにくいところなどを質問させます。司会は、読んで発表する必要はありませんが、すべての資料に目を通して、説明に間違いがある場合は指摘しなければいけません。
じつは、私も読んで発表する側に参加しており(模範を示さなければならないのでけっこう緊張します)、今後は、私が読むものは学生に用意させようと考えています。
このやり方だと、学生は、自分が読むものは自分だけしか読まない、それも、あとで他のひとに内容を紹介しないといけないので、一生懸命読んで理解してくれ、聞いている学生も、教員である私が紹介するよりも熱心に耳を傾け、議論に参加してくれます。
たくさんの本やニュースにふれた学生が、教養を育みながら、やがて自分なりの問題を見つけ、それを深めてくれることを期待しつつ、しばらくはこのやり方を続けていきたいと思います。