関東学院大学には、中国、台湾、韓国、ベトナム、ネパール、ニュージーランド、モンゴル、ミャンマー、トルコなどから来た、学部生161名、大学院生38名、研究生4名の計203名の留学生がいます(2024年度5月現在)。それらの留学生のうち、14名が国際文化学部の比較文化学科・英語文化学科に所属しています。
その14名は、留学生用の入学者選抜試験に合格して入学してきた「留学生」ですが、実は、国際文化学部には、中国、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ニュージーランドなど留学生ではない、「外国にルーツを持つ学生」も多く在籍しています。外国にルーツをもつ学生たちは、少なくとも高校では日本語で授業を受け、学校生活も日本語で過ごしてきたケースがほとんどですが、それぞれの家庭内で使われる言語は日本語とは限りません。日本語が母語に近い場合もあれば、どちらかというと日本語の方が得意、どちらかというと日本語のほうが苦手などさまざまです。言語だけではなく、文化的にもさまざまで、いわば、日々の生活そのものが複言語・複文化の環境にあります。
国際文化学部の特徴の一つは、そのような留学生や外国にルーツを持つ学生が身近にいるところです。一例として、先日の4年生のゼミナールでの出来事を紹介します。私のゼミ生は10名ですが、そのうち5名が就職活動で欠席し、出席者は5名だけでした。その5名は、日本人が1名、中国人が3名、カンボジア人が1名です。欠席者が多かったので、卒業論文の話はひとまず置いておき、就職活動で困っていることなどを話してもらいました。
困っていることとして、日本人の学生が「自己アピールが上手くできない」と言いました。すると、中国人3名とカンボジア人1名が、自分たちが感じているその日本人学生の良いと思うところを、エピソードを交えながら、口々に伝え始めました。「いつも進んで話しかけてくれるところ」「笑顔で人の話を聞こうとするところ」「ホスピタリティがあるところ」「話しやすい雰囲気を作ってくれるところ」「相談しやすいところ」などなどです。日本人の学生は、はじめは謙遜していましたが、次第に自分の良いところを自覚していったようでした。そして、中国人とカンボジア人にアドバイスをもらいながら、「ホスピタリティ、協調性、社交性、笑顔」を主なキーワードとして、自己アピールの文を完成させました。日本文化的な特徴の一つである「謙遜、控え目、慎ましさ」は、こと「自己アピール」という場面に限っては、かえってマイナスに働く可能性があり、その日本人学生はなかなか自分で自分の良さを言えずにいました。しかし、日本文化とは別の化的背景を持つ中国人とカンボジア人が“良さ”を明確に言語化してくれたことで、自信につながったのではないか思います。
国際文化学部というと、海外への「留学」がまず頭に浮かぶと思います。今年度、国際文化学部の学生は、韓国に4名、アメリカに4名、台湾に3名、中国に1名が長期留学(半期・1年)をする予定で、短期の夏期語学研修プログラムでも10名程度が留学する見込みです。「留学」の効果としては、外国語能力の向上に加え、異文化理解、異文化間調整、異文化コミュニケーションに関する諸能力の向上も見込めます。
しかし、経済的な事情、家庭の事情などにより、「留学」することが難しい場合もあると思います。そのような場合でも、異文化理解、異文化調整、異文化コミュニケーションに関する諸能力は、日本語を母語としない留学生や外国にルーツを持つ学生とのやり取りを通して、普段の授業や大学生活でも向上させていくことができます。留学するしないに関わらず、皆さんには、留学生や外国にルーツを持つ学生が身近にいるという国際文化学部の特徴を活かしてもらえればと思います。