アメリカの秋のイベントといえば、ハロウィンやサンクスギビングです。私が担当しているゼミナールでは数年前からハロウィンを授業で取り上げています。ハロウィンは日本でも認知度が高まっているイベントですが、近年は韓国の梨泰院での事故や渋谷でのゴミ問題が問題として挙げられました。実は本場のアメリカでもかなり前からハロウィンに関する様々な問題が指摘されてきました。一般的には子どもが主体のイベントですから、暗闇での安全性や、衣装で視覚が遮られやすくなるため交通事故や怪我につながる可能性、見知らぬ人からもらうお菓子の安全性などについて話し合われてきました。それだけではなく、衣装についても不適切な衣装にならないように細心の注意を払う必要があります。
私が学生時代を過ごした学園都市のボストン郊外ではハロウィンが毎年大きなイベントになっており、10月末になるとハロウィンパーティーが恒例になっていました。普段はあまり交流のない近所の人とバックヤードでパーティーをすることもありました。この時期に通りを歩くと、いろんな仮装を目にし、とても楽しい経験でした。ゼミナールの学生には少しでもアメリカ文化を体感してもらいたいという思いからハロウィンの週にあたる授業回には、仮装して授業に参加したい人にはそうしてもらっています。この日はお菓子交換などをしていつもの授業よりも賑やかですが、授業では先に指摘したような問題について学び、アメリカ社会について考える貴重な機会になっています。 アイルランドの伝統行事であったハロウィンがどのような経緯でアメリカにもたらされたのかを学び、その後、ニューヨーク公共図書館のデジタル・コレクションから時代別のハロウィンの葉書や写真を見つけて、アメリカ社会におけるハロウィンの変容について皆で考えます。とりわけ衣装に関しては大きな変化があることがわかります。今日はポリティカル・コレクトネス (人種や宗教、性別や見た目などにおいて差別や偏見を含まない中立的な表現) の認識が高まったことにより、衣装選びに関しても気をつけることが重要視されています。子ども達にどのような衣装を着せるのか、子どもを持つ親にとっては一大イベントでもあります。よってこの時期になると子育てやハウスキーピングの雑誌にはハロウィンの衣装についての特集が組まれ、不適切な衣装にはどのようなものが含まれているのか具体例が示されています。そのような英語で書かれた記事も参考にしながら学生とディスカッションを行っています。