2014.04.11. お知らせ

◇◆2013年度文学部国際交流プログラム報告 ハワイ州立大学付属カピオラニ・コミュニティ・カレッジを訪問して

2014年2月25日(火)の午前7時30分に、われわれ5人は前日予約しておいたタクシーに乗って、カピオラニ・コミュニティ・カレッジに向かった。ホノルル市内から渋滞が無ければ約20分くらいの距離で、小高い山の中腹にある広大なキャンパスである。当日、国際センターの佐藤さをり先生と待ち合わせすることになっていた、大学のカフェテリアのあるオラーパという建物をめざしていると、背の高い日本人らしき女性が駆け足で近寄って来た。それが佐藤先生だった。ハワイ大学は全部で10キャンパスほどあり、カピオラニ・コミュニティ・カレッジは2番目に大きなキャンパスだそうで、学生数約7000人とうかがった。一日の研修が始まる前に、ざっと広いキャンパスを案内していただいてから、8時40分から開会式が催された。このプログラムのコーディネーターである、佐藤さをり先生の司会で、国際センターのもうひとりの補佐役である大塩直子先生、オブザーバーとして参加されたヴィンセント・ミツハル・オカダ先生の3人とわれわれ関東学院大学からは私を含めた5人とで、当日の研修の予定と注意事項、等の説明がなされた。当日渡された研修プログラムによると、一日で4クラスの授業に参加し、学生どうしの交流を深めるという内容である。

最初のクラスは、日本語の初級のクラスで、われわれが飛び入り参加する中で、ヒロエ・イワモト先生の大変熟練された授業を参観させていただいた。これが一種のウォーミング・アップで、2時間目は「異文化コミュニケーション」の授業で、担当のジェームズ・バリカオ先生が研修の授業の責任者のような役割であった。ジェームズ先生の授業は午前中と午後とで2クラス予定されていた。午前中の授業にも参観させてもらって、学生たちに混じって、つい教師の悪い癖で、ジェームズ先生に質問をしたりしていると、先生のやりにくそうな雰囲気を察知したので、午後からの授業参観はやめにして、図書館を散策した。12年くらい前、日本の近・現代詩のアンソロジーである山本健吉(編著)の『こころのうた』の英訳版を偶然ハワイ大学出版会から出してもらったことがあった。その本が、ハワイ大学付属のキャピオラニ・コミュニティ・カレッジの図書館に収められているかどうか気になったので、さっそく図書館のレファレンス・サービス係りの人に事情を話して、ハワイ大学の10キャンパスの図書館に収蔵されているのかどうか、検索してもらった。その結果、やはり想像した通り、文学系の学部があるハワイ大学マノア校の図書館に収蔵されているとのことだった。ありがたいことに、検索してくれたレファレンス・サービスの方が興味を示してくれ(ハワイ大学出版局から出版されているので当然かもしれない)、この本をキャピオラニ・コミュニティ・カレッジ図書館でも収蔵するといってくれ、紹介してくれてありがとうといってくれたのは、今回の旅の個人的に忘れられないおみやげである。さて研修の最大の山場である、4名の学生(英語英米文学科4年のKさんとTさん、現代社会学科3年のI君と同じく現代社会学科2年T君)による「日本文化の現在と未来」というテーマに則った、プレゼンテーションを各自10分ぐらいで、現地の教員や学生の前で英語で行うという緊張の時間がやってきた。まずKさんの「和ろうそく」という日本的な事物の紹介を中心にしたプレゼンからはじめられた。一番バッターは一番緊張が強いられる。当日ハワイは、日本では真冬というのに、摂氏26度の暑い日で、教室内はエアコンが回っていた。エアコンのせいか、Kさんの声が最終列に座っていた私の席まで届きにくい。引率教員としては、手に汗握る瞬間である。けれども、Kさんが日本から持ってきた現物の「和ろうそく」を聴衆に回覧しているうちに、聴衆者からは興味津々の眼差しが感じられた。2番目はI君で、タイトルは「なぜ日本人は富士山がかくも好きなのか」という、実は説明しづらい論点を、やさしい言葉を使って論理的に展開してくれた。I君あたりから余裕が感じられ、こちらの緊張もほぐれてきた。次はT君で、まだ2年生なのでみんなの中では最年少に当たる。演題は「日本の建築文化」でかなり専門的と思いきや、「東京スカイツリー」を中心に据えたプレゼン。内容が良かったのは、法隆寺の五重塔とスカイツリーの建築構造が基本的に変わらないというところであった。プレゼンの練習回数をこなして、本番ではじつに落ち着いた堂に入ったものであった。最後のトリを務めたのがTさんで、「抹茶菓子」の特に抹茶の豊富な応用例と抹茶そのものの魅力を語ったもの。Tさんは、英語のディリバリーが慣れていて、人前での英語のスピーチも得意であるため、プレゼンの基本である聴衆の眼を見て語りかける余裕が感じられた。Tさんも日本から抹茶のお菓子を持参して、プレゼンの後、聴衆に配って味見をしてもらった。全員4人のプレゼンは、現地の先生や学生たちから好評を博した。

このプレゼンが一時間くらい続いた後、残りの一時間は、4つのグループに分かれ、それぞれのグループにうちの学生がひとりずつ加わり、英語と日本語を使ってディスカションが続けられた。現地の学生からは、手作りのお菓子や飲み物、さらにはレイなどのプレゼントがふるまわれ、歓迎の温かい雰囲気の中で、授業というよりいわゆる交歓パーティといったほうがふさわしい、なごやかな時が経過していった。そして閉会式が行われ、4名の学生に修了証書が、ひとりひとり手渡され、プログラムの主催者からのあいさつと私にまでもコ―ディネーターとしての感謝状およびレイまでいただいてしまった。短い研修であったが、参加者全員貴重な体験をすることができた。今回のプログラムの候補者の選抜にあたってご協力いただいた、中村克明先生、?捷先生、新井克弥先生に心より感謝申し上げたい。なお、学生にとって、受動型でない発信型の貴重な体験学習の機会を与えてくれた、文学部国際プログラムに対し、あらためて感謝申し上げる次第です。