教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.119

2014.12.22 比較文化学科 岡田 桂

「働くこと」と大学の学び

 私がはじめて働いてお金をもらったのは、大阪の某ハンバーガーチェーンでアルバイトをはじめた1987年、15歳で高校一年生の時でした。忘れもしませんが当初の時給は490円! 当時でも「安いな~」と感じたものです。なぜそんな時給でもアルバイトを続けたかと言えば、そもそも当時は高校生のアルバイト自体が一般的ではなく、雇ってくれるところも限られていたからです。(ちなみに多くの高校ではアルバイトは禁止されていました)
 
 そして、どうにか仕事にも慣れた頃、厳しくて有名な店長がアルバイトを集めて次のように告げました。「最近、他店のアルバイトが倉庫からカートに荷物を満載して店舗に運ぶ途中、通行人に衝突して大ケガを負わせてしまった。この様な場合、アルバイト本人に責任を取ってもらう(保障してもらう)のでくれぐれも気をつけるように」。
 
 これを聞いたとき、当時の私は、こんな安いお金で働いているのに業務上の事故の責任まで取らされるということに、大きな違和感を覚えました。でも、高校一年の自分にはその疑問に応えるだけの知識も経験もなく、その後、受験を控えた3年進級を前にアルバイトは辞めてしまいました。
 
 あれから30年近く経ち、現在、働く環境は大きく変化しています。かつてのアルバイトのような働き方や待遇が、正社員にまで広がっています。同時に、大学での学びに対する期待も変化し、とかく社会で役に立つ実学的なものが求められがちです。でも、もしみなさんが社会に出て働き始めるときに、労働に関する規則や法律を何も知らず、自分の権利について学ぶ機会がなかったとしたら、それは手ぶらで社会の荒波に対峙するようなものです。また過去の事例(歴史)、あるいは、他の国や地域での働き方の条件を知ることは、自分の置かれた立場を客観的に知る助けとなるかもしれません。
 
 社会(や会社)は、時として、働き手(未来のみなさんです)が自らの権利について知ることに消極的です。そして、こうした知識の多くは、大学の人文社会系の学びから得られるものです。大学での学びの強みはその多様さにあり、実学的なものから抽象的なものまで多岐にわたりますが、必ずしも「実学的ではない」とされる知識が、将来、自らの身を守る武器になる可能性も秘めているのです。
 
 
 
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