教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.121

2015.01.23 比較文化学科 大越 公平

雪形散歩 - 昨年は「馬形」、今年は「猫顔」

 私は、このコラムで数回、「雪形」について取り上げています。雪形は自然の移り変わりを生活の目安する「自然暦」の一つです。昨年度のコラム「今年こそは笠ヶ岳の雪形を」(2014年1月17日)には、中央アルプスの雪形の一つ、田切岳に現れる「飛龍」の画像を掲載し、新年の希望としては、岐阜県にあります笠ヶ岳の雪形、「馬形」を見るために高山へ出掛けたいと記しました。その半年後の5月下旬に、かろうじてですが、この雪形を見ることができました。その時の様子を次のように「研究室の暦」(授業用)(2014年6月3日)でレポートしました。

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 晴れているけれど少し離れている山々は見えません。2014年5月25日(日)の昼から26日(月)の朝まで岐阜県高山市に滞在し、雲の間から笠ヶ岳とその雪形が現れるはず、現れてほしいと願いながら東の方角を眺めていました。こんなときに、てるてる坊主にお願いしても、無理でしょうね。晴れているのですから。では、何にすがったなら良いのでしょうか。市立図書館の郷土資料室にある民俗資料にそのヒントを求めたのですが、残念ながら見当たりませんでした。強い風を送り、雲を吹き払うお呪いとは?
「昨日はよく晴れていたのですが・・・・・・。今日は曇りで、明日は雨の予報が出ていますよ。難しいですね。」と観光案内係、ホテルのフロントの方、バスセンターの案内係、タクシーの運転手等々、私が尋ねたすべての人は丁寧な言葉で、的確なアドバイスをしてくれました。では、今回は、来年のための予備調査・・・・・・?
 
高山市内眺望(300)
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 白川郷をはじめとした高山地域が世界遺産に登録され、古い街並みを歩く外国人観光客が多くなりました。京都に並ぶ国際観光都市になるかもしれません。コンビニに入りますと、お客さんはすべて外国人、店員だけが日本人でした。「お買い上げが3000円ですので籤を6回引けますよ。」と年配の店員さんは、三角籤を箱から取り出す仕草をしながら簡単な英語で対応しています。お客さんが神妙に引いた籤を確認し、「残念、はずれです」。会計の順番を待っていた私も、自分が籤を引いているような気になりましたが、私が買ったのは、「中京新聞」(2014年5月26日)の130円だけでしたから、籤を引く権利はありません。でも、図書館の参考係の親切な方から「雪形の記事は今日の新聞に掲載されていますよ」と教えていただき、その新聞を買い求めることができたのですから、「当たり籤」を引いたようなものでした。「”白馬”見守る田植え」の記事は、雪形研究の大切な資料となりました。
 
 記事によりますと例年より一週間遅く、17日ころから見え始めたそうです。この微妙な違いが農事暦には役立ちます。本来ならばこの自然の変化により田植えを一週間遅らせることになるのですが、現代の農法ではこうした微妙な変化には左右されず、5月の連休後の土曜日あるいは日曜日に当たる日に田植えをするようです。高山市の市街地に近い地域では、すでに田植えが終わっているところもありました。
 
馬形(300)
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 26日(月)午前9時には、厚い雲に覆われ、今にも雨が落ちてきそうな様子でした。ところが、何故か一か所だけ山の頂上とその周辺が見えているではありませんか。目を凝らすとそれは笠ヶ岳であり、高山市内眺望 点線内に雪形が現れます。馬の雪形が現れています。多くの山々が連なるなかで、笠ヶ岳とその雪形だけが見えるのは神秘的な光景でした。山の神の粋な計らいのようにも思えてきます。日々、山を眺めて暮らしている人びともこうした気象の微妙な変化に注目することから、雪形を見出したのでしょうか。「現れる形が曖昧であるがゆえに、世代を越えて多くの人びとが注目し、語り伝えてきた」と言えるのでしょう。今回は、雪形伝承の背景にある微細な気象の変化を学ぶことができました。やはり、私の研究の原点は、フィールドワークです。
 
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 さて、今年は羊の年。どこかに羊の形をした雪形もありそうですが、これまでその事例は報告されていません。雪形は、回遊魚の到来を知る漁労暦もありますが、主に、播種や田植えといった作業の目安に使われる農耕のための生業暦として伝承されているものです。日本では、牧畜のための「雪形」は難しいようです。でも、世界のどこかに伝承されているかも知れません。
今年は、利尻島へ行きます。利尻山に現れる「舟」や「猫顔」を見てきます。よい画像が撮れたなら、来年のお正月ころに、その次の探訪予定も含めて報告しましょう。
 
石臼マーク
 
 本稿は、昨年、学内の「オリーブキャンパス」で、授業用に配信した「研究室の暦」(2014-12)(20140603) 馬の雪形」をもとにしています。
山マーク(リサイズ小)
 
 「雪形」については、その一部に関する説明ですが、岡田芳朗、神田泰, 佐藤次高, 高橋正男, 古川麒一郎, 松井吉昭(編集代表)『暦の大事典』東京:朝倉書店(2014)の「種まき男・白馬岳」(279-284 頁)にまとめました。文学部図書館で閲覧できますので、関心のある人は参考にしてください。雪形を含めた「ふるさとの自然暦」について関心をもちましょう。ユニークな自然暦を知っている人は、お知らせください。自然と文化との関わりを知るためのオリジナルな研究を進めましょう。
 
判子マーク
 
 
 
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