教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.128

2015.03.20 英語文化学科 西原克政

研究休暇中のゼミ見学

 本年度(2014年度)は一年間、国内研修の時間をいただいた。家から一番近い鶴見大学図書館に通って、研究テーマ関連の資料に眼を通すのが一週間のほとんどの日課になっていた。
 
 ちょうど六年前にフルブライト留学生としてうちの大学に一年留学していた、マリアン・タルコフさんは現在カリフォルニア大学バークレー校の博士課程に在学中だが、日本学術振興会から奨学金をもらって東大の研究生として六年ぶりに来日していたので、一年の研究期間が私と重なった。彼女は日本近代詩が専門で、なかでも北原白秋を中心とした抒情詩の歴史的変遷を跡付ける研究を行っている。おたがいにテーマは違うものの、詩を専攻しているので、研究の進捗状況を報告するため月一回会っては、アメリカの詩の状況や日本の詩の様子を、おいしいお酒と食事を交えてゆっくり楽しむことができた。
 
 彼女が指導してもらっているエリス俊子先生の研究室で、日本を発つ前の自分の最後の研究発表をぜひ聞いてもらいたいと声をかけられ(こういう発想がわれわれ日本人にはあまりないかもしれない)、公の場で彼女の研究発表を聞くことはもうあるまいと思って、意を決っして初対面のエリス先生の研究室を訪れた。エリス先生を除いた十人くらいの学生(?)は、国際的で、まず中国人の林(りん)准教授はかつてのエリス先生の教え子だったそうで、西脇順三郎の詩学の研究で知られる東大の先生で、ゼミナールに時々参加してくれる重鎮のような存在である。そして韓国からの留学生が二人。アメリカからの留学生が、マリアンさんを含めて三人。残りの四人が、私を含め日本人という割合であった。議論に使われる言葉は日本語であり、詩の専門ではない大学院生も多く参加しているゼミナールで、ともかく活発な議論がとめどなく出てくるのは、すばらしいことだと驚かされた。つまり、留学生たちが母語以外の日本語で、流暢に内容のある専門的な見解を自然に語り合える場を、ゼミナールで実践しているのが印象的であった。
 
 マリアンさんも大学から日本語を学び始めたそうだが、いまでは日本語の文献を独力で読み通す能力も高いが、読むスピードの速さに驚かされる。日本の詩を研究する学者が、アメリカでは極端に少ない限られた人であり、就職も困難であると聞くと、同じ興味を持つ人間としては暗澹たる気持ちになってしまうが、そんなことを物ともせず研究に打ち込む留学生の姿は心を打つものがある。私にとっては大変貴重な経験であった。
 
 
 
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