2011.10.21.
比較文化学科井上 和人

いただいた本の話

皆さんにとって、いただいてうれしいものは何ですか。
行きたかったライブのチケット?
それとも、ブランド物のバッグ?
日本文学を研究している私は、やはり本ですね。

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写真の和本は、『名物六帖(めいぶつりくじょう)』といいます。江戸時代の伊藤東涯(いとう・とうがい)が著した辞書で、版本全22冊中、私の手元に15冊あります。この本は、恩師の故谷脇理史(たにわき・まさちか)先生がくださいました。「揃っていないし、虫も入っているけれど、それでもよければどうぞ」と。井原西鶴(江戸時代の作者です)の研究者として高名な谷脇先生ですが、西鶴だけを読んでいたわけではありません(当たり前ですね)。和本のご蔵書は多く、しかも、その内容の幅広さといったら!
もっとも、先生ご自身は、「雑本だよ」と笑っていらっしゃいましたが。
今年の夏休み、館林に谷脇先生のお墓参りに行きました。そのとき、先生のお宅にうかがいましたら、「古本屋が持っていかない本が、まだ残っていまして」と、先生の奥様がおっしゃいます。書架で2段分ほどはあったでしょうか。ご厚意に甘えて、その中から1冊、『もものはやし』(1981、未刊江戸文学刊行会)をいただいて帰りました。桃林堂(とうりんどう)という作者の浮世草子2作品の翻刻を収めた本です。桃林堂の作品は、なかなか原本を見るのが難しく、翻刻といえども大変にありがたいのです。

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いただいた本についてお話しするつもりが、ついつい恩師の思い出話になってしまいました。手元には、多くの方々からいただいた本が、まだあります。またの機会といたしましょう。