教員紹介

国際文化学部教員コラム vol.212

2019.07.23 比較文化学科 八幡 恵一

ビブリオバトル

 関東学院大学に着任してゼミを担当するようになってから、そこではずっと「ビブリオバトル」を行っています。ご存知の方もいると思いますが、ビブリオバトルとは、各々が自分の好きな本を一冊もちよってみんなの前で紹介し、どの本が一番面白いと思えたかをあとで投票して決めるという活動です。日本語では、公式サイトにある通り「知的書評合戦」と呼ぶのがいいでしょうか。本を読むという事前の作業もそうですが、その本をいかに魅力的に伝えられるかが試されるため、まさに「知的な戦い」という言葉がふさわしいと思います。いわゆる頭のよさや知識の量が問われるわけではない「知的な戦い」です。
 ビブリオバトルを大学で行うメリットは数多くあります。あまり本を読んでくれない昨今の学生に読書をさせることができるというのは言うまでもなく、5分間という決められた時間で、それも原稿を読んだりせずに本の面白さを伝えなければなりませんから(ビブリオバトルには色々とルールがあります)、プレゼンテーションの能力を鍛えることもできます。その本が実際に面白いかどうかはさておき、とにかく面白そうな(読みたくなる)本だと思わせた方が勝ちなのです。それと、あまり大きな声では言えませんが、教員の準備が大して必要ないというのも忙しい時期には助かったりします(もっとも、私はゼミでビブリオバトルをするときは自分も必ず参加するため、紹介する本の準備はしなければなりませんし、優勝者には自腹で図書カードを贈っているので、やりすぎると出費が痛かったりしますが)。
 学生にとっては、本とはいえ自分が好きなものについてみんなの前で語れるのですから、ふだんの授業よりも楽しくやれ、投票で一位になった学生は毎回けっこう嬉しそうで、思いのほか盛り上がります。最近では、就職活動を終えた学生が、面接でビブリオバトルのようなことをやらされたと言っており、就活にも役に立ちそうです。
 そんなこんなで毎年、というより毎学期、何なら毎月ビブリオバトルをしていますが、ひとつだけちょっと不満なことがあります。それは、学生のもってくる本が、どこかで見たり聞いたりしたものばかりだということです。いま話題で、書店の目立つ場所に平積みにされている本、映画化されたりドラマ化されたりしている本、芸能人が書いた(とされる)本。もちろん、そういった本でもかまわないのですが、ビブリオバトルの醍醐味は、やはり「自分だけの一冊」を発見して、こんな本があるんだぞというのをみんなに教えてあげることではないかと思っています。書店の片隅、図書館の奥、あるいは自宅の本棚の埃の下に、店員さんも司書さんも家族もだれも気づかない、ひっそりと眠る本を見つけ、その発見者になること、この喜びを味わってほしいのです。
 そんな探し方だと、10冊に1冊くらいしか本当に面白い本には出会えないかもしれませんが、それでも、そのアタリの1冊が見つかったときは、絶対に人に教えたくなるでしょう。変な言い方ですが、最初から面白いことがわかっている本を読んでも面白くありません。ビブリオバトルは、自分だけが知っている「いいもの」を人に教えたくてしょうがない、そういううずうずする気持ちを思いっきり発散する場であってほしいと思います。
 そういえば、批評家の吉本隆明が、「この本のよさは自分にしかわからないな」とたくさんの人に思わせるのがいい作家だ、とどこかで言っていましたが、そんな作家こそ、まさにビブリオバトルにうってつけかもしれません。自分でも探してみたいと思います。
 
 
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