2020.05.22.
比較文化学科八幡 恵一

フランスの思い出その1

 昨年の夏、比較文化学科の「ワールドスタディ(海外現地研修)」で、学生二名を引率してフランス、パリに行ってきました。研修の様子は比較文化学科の学科通信第30号に記事を寄せたので、ここでは書きませんが、学生のときの留学以来、久しぶりにフランスを訪れ、いろいろと思い出すことがありました。今回からしばらくは、留学中のフランスの思い出を綴ってみたいと思います。
私は2007年の秋から2012年の末までフランスの大学に留学をしていました。留学中は、それはもういろいろなことがあったのですが、学問的なことはちょっとおいといて、日常生活のレベルで起こった、あんまり嬉しくない出来事を書いていきたいと思います。
だれでもそうだと思いますが、留学するにあたって最初に問題となるのは、留学先で住む場所を見つけることです。私の留学先はパリでしたが(留学先が決定するまでも大変なことがあったのですが、これは機会があれば書きます)、パリはアパートなどが多い反面、やはり家賃が高く、また外国人がきちんと住める部屋を個人で探すことはとても難しかったため、はじめ、パリの南の方にある大きな学生寮に応募しました。これがすでに6月ごろ(出発は9月初旬)だったのですが、選考にもれてしまい(倍率が三倍だったそうです)、やむなくアパートを探し始めました。すでにアパートもインターネットで探すことができるようになっていましたが、保証人のいない外国人にとってパリのアパート探しは非常に難しく、全然見つかりません。これはまずいと思い、どうすればいいかなあと、当時、フランス語の練習のためにインターネットで文通(!)していたフランス人の女性に話した(というかメールした)ところ、日本語を勉強している彼女の友人が、日本人とルームシェアしたいといっている、あなたのことを話したらシェア相手になってもいいといっている、といいます。すわ!ということで是非もなくお願いし、その子の名前と連絡先を聞いて、早速、連絡してみました。その子はとても親切で、大学生の女の子でしたが、もちろん私と二人ではなく、ほかの友人たちといっしょにシェアしましょう、とのこと。うるさくて勉強に集中できなくなるかも、と思いましたが、部屋を探して契約もしてくれるとのことで、とにかくお願いしました。
その後、7月、8月と連絡を取り合い、向こうからは「いい部屋を見つけたから明日見に行ってみる」とか、「家賃はどのくらいなら払える?」とか、けっこう具体的な話があり、こちらはとにかくお任せしますと気楽な返事をして、ひたすら留学のための手続きや荷造りをする日々。荷造りを完璧にすませ、あとは住所を書いて送るだけ、向こうに着いたら不安はあるけどまずはとにかく彼女にお礼をいおう、と思っていた8月後半(何度もいいますが出発は9月初旬)、彼女からついに最後の返事がきました。「一人用のいい部屋を見つけたから契約しちゃった」。
いちおう抗議もしましたが、彼女いわく(メールは残っていませんがよく覚えています)「あなたがなぜ自分で部屋を探そうとしなかったのかわからない」。ちょっとなにいってるかわからない、などとのたもうている場合ではもはやなく、早々に抗議というか連絡そのものを打ち切って、つぎの部屋を探しにふたたびインターネットの大海原へと乗り出したのが、出発の一週間前でした(続く)。